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気温上昇で広がる貯蔵害虫のリスク、薬剤頼みを脱し予防を軸に食品の供給網を守る新発想

気温上昇で広がる貯蔵害虫のリスク、薬剤頼みを脱し予防を軸に食品の供給網を守る新発想のイメージ

本ページは公開情報を整理した業界レポートであり、特定の事業者・機器・薬剤の推奨ではありません。

ニュースの概要

英国の害虫防除の専門団体が、気温の上昇によって穀物や乾燥食品を荒らす貯蔵害虫のリスクが高まるとして、食品安全の担当者と害虫管理の担当者がもっと連携すべきだと訴えた。コクゾウムシのような害虫は、農場での保管、倉庫、食品工場、物流、小売店のどの段階でも増える可能性があり、食品ロスや異物混入による汚染につながる。一方で、使える殺虫剤は規制で絞られ、燻蒸剤(=密閉した空間にガスを満たして害虫を駆除する薬剤)も厳しく管理されている。そのため、薬で押さえ込む従来のやり方から、侵入を防ぎ、早く見つけ、環境を整える総合的な方法へ軸足を移す必要があるという主張である。

引用元: 英国の害虫防除業界、気候変動による貯蔵害虫リスクの拡大に警鐘(PPC Online)

分析・見解

気温が上がると貯蔵害虫の世代交代が速くなる

貯蔵害虫の厄介な点は、変化が目に見えにくいことだ。コクゾウムシなどは、気温に合わせて発育の速さが大きく変わる。目安として、30度前後なら卵から成虫まで1か月ほどで済むが、20度前後では2か月以上かかる。冬の寒さが弱まれば、活動が止まる期間が短くなり、1年に繰り返す世代の数が増える。

つまり、気温がわずか1〜2度上がるだけでも、被害は足し算ではなく掛け算で増えうる。以前なら「春まで持ちこたえれば問題ない」と考えられた在庫が、暖かい時期の延びによって危険な状態になる。この点が、今回の警鐘の核心だと考える。

倉庫から店頭まで、弱い所から被害が広がる

食品サプライチェーン(=原料から店頭までの流れ)は、どこか一か所が弱いと全体に響く。農場の貯蔵庫で入り込んだ害虫が、倉庫で増え、工場に原料として運ばれ、小売店の棚に並ぶ。各段階の担当者は自分の持ち場しか見ていないことが多く、発見が遅れる。

さらに、食品安全の担当者は微生物や異物の管理に集中し、害虫管理は外部の業者に任せきりという会社も少なくない。ところが、虫の死骸や食害の跡は、そのまま異物混入や製品回収の原因になる。害虫は衛生管理の一部ではなく、品質問題そのものだ。団体が連携強化を求めたのは、この縦割りを崩したいからだろう。

燻蒸剤の規制強化で、薬に頼る選択肢が細っている

過去には臭化メチルという燻蒸剤が広く使われたが、オゾン層への影響から国際的に段階的な廃止が進んだ。日本でも、検疫などの例外を除いて使えなくなっている。代わりにリン化水素などが使われるが、同じ薬を繰り返すと、効きにくい個体だけが生き残る「抵抗性」の問題が起きる。

規制が強まり、薬が効きにくくなり、害虫は暖かさで増える。この三つが同時に進む点が重要だ。薬を増やす道は事実上ふさがれている。だから、侵入を防ぐ構造、温度と湿度の管理、定期的な監視、清掃の徹底といった、地味でも効果が積み上がる対策が主役になる。

日本の食品業界が学べる二つの視点

日本は高温多湿で、もともと貯蔵害虫に厳しい条件がそろっている。それでも、英国の議論から学べる点はある。一つは、気候変動を「将来の話」ではなく、今の点検計画に織り込む姿勢だ。もう一つは、害虫管理の記録を食品安全の記録と同じ場所で見る仕組みである。トラップ(=害虫を捕まえる仕掛け)の捕獲数が季節ごとにどう動いたかを数年分並べれば、自社の危険な時期が見えてくる。

ビジネスへの影響

点検の頻度と基準を、暖かい期間の長さに合わせて見直す

まず、年間の点検計画を見直したい。多くの現場では、害虫対策を強める期間を夏の数か月と決めている。しかし暖かい期間が延びれば、春先や秋の在庫も同じ危険にさらされる。トラップの数を増やす前に、過去数年の捕獲記録を月別に整理し、増え始める時期を確認するとよい。その上で、一定数を超えたら在庫の入れ替えや清掃を行うといった基準を決めておく。

投資は小さくてよい。温湿度計の追加や、棚の下、搬入口のすき間の補修から始められる。

委託先の業者を、巡回役から共同の設計者に変える

次に、害虫防除業者との契約内容を見直す。月次の巡回と報告だけでは、気候の変化に対応しにくい。品質保証の担当者と業者が、年に一度でも記録を持ち寄り、危険な場所と時期を話し合う場を設けたい。取引先の監査でも、傾向をつかんで手を打っている会社は評価されやすい。

また、原料を受け入れる段階の検査と、仕入れ先の保管状況の確認も欠かせない。自社の庫内が清潔でも、入口で持ち込んでしまえば意味がない。仕入れ契約に保管条件の確認を盛り込めば、被害を上流で止められる。

薬剤規制を前提にしたコスト計算を始める

最後に、コストの見方を変えたい。薬剤が使えなくなる、あるいは効きにくくなるほど、代わりの手段は割高になる。だからこそ、製品回収や廃棄による損失と、予防にかかる費用を並べて比べる必要がある。一度の回収が数年分の予防費用を上回る例は珍しくない。予防への支出を経費ではなく、損失を減らす保険として説明できれば、経営会議でも理解を得やすい。

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